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和綿のストールができるまで

わたしたちは三陽商会のCSR活動の一環として、2013年から栃木県にある渡良瀬エコビレッジで日本古来からある和綿を育ててきました。 そして、のべ400人の社員で育てた和綿を使って2016年には和綿のストールをつくりました。
2017年にEARTH TO WEARがスタートする前のこと。2016年に和綿のストールができるまでのWatatsumugiのストーリーをお伝えします。

Watatsumugiからみなさまに紡ぐ最初の届け物はストールです。

和綿は古くは元禄時代から伝わる高温多湿な気候にあい夏涼しく冬暖かい綿です。特徴として、繊維の中にある空洞は通常の米綿(アメリカの綿)などの2-3倍あるため、弾力性があり製品がしっとりした風合いに仕上がるのです。

ご存知ですか?綿は種類によって花の咲く時期や実のつき方が全然違うのですよ。雨が少ない地域で育てられるアメリカの綿は上を向いてコットンボールは弾けますが、雨が多い日本では雨を避けるように下を向いて弾けます。

**知れば知るほど奥が深い「綿」の話**。

和綿を使った製品化に向けて、我々は「綿」の博士といわれる大正紡績の近藤部長に相談することにしました。 
近藤さんは20年前より世界28ヵ所で綿花畑と紡績工場をつくってきたエンジニアのプロ。1989年にオーガニックコットンの提唱者サリー・フォックスに出会ったことをきっかけにオーガニックコットンを広めることが世界平和につながると考え、現在は大正紡績で事業を通して「幸せな糸をつくる」ことで世界の人たちを平和にする活動をされています。

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初めて近藤さんにお会いしたのは2014年の1月。世界中を飛び回るお忙しい近藤さんのお時間のあいまをぬって、生地サンプルや製品サンプルなど近藤さんの作品たちでいっぱいの近藤さんの事務所に私たちは何度も何度も伺いました。

「心優しき人が製造業に必要」と話され東北の震災直後にもいちばんに被災地に和綿畑をつくり被災地の復興に尽力されている近藤さん、だれよりも「綿」に対する造詣の深さ、幸せな糸をつくるエキスパートの近藤さんは、SANYO COTTON FIELD で育てた和綿の製品化プロジェクトについても、我々の意図を愛情をもってご理解くださり、渡良瀬和綿の繊維長、繊度、単繊維強力など的確に分析され、最終的にこの和綿と他産地の綿をミックスしてストールをつくることが決まりました!

綿のルーツである南米ペルーのアスペロというバルキー性がある綿とインドのDCH32アラビア海からインド洋に吹くモンスーンで育つ超長綿のDCH32と和綿を撚った糸はSANYO STORYという名前が近藤さんよって名づけられました。

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このSANYO STORY を緯糸で使い、経糸に米国のスーピマコットンをひいてストールを織ることも決定しました。今回、近藤さんには、自分たちが種から育てた綿が糸になっていくところも見たい!という希望も受け入れて頂き大阪府阪南市にある大正紡績の工場を見学させいただきました。

大正紡績は大正7年創立の紡績メーカーで、特に人に優しい地球に優しいエシカルなオーガニックコットンを扱っていることで有名です。 オーガニックコットンの生産国として1位のインドはもとよりトルコ、エジプト、ウガンダにも畑を持つTraceability(原産地の追跡が可能) Sustainability(持続可能な生産体制) Environment(環境に配慮された原料と生産) Dramatic Story(ストーリーのある背景) Made in Japan(日本の誇れるものづくり)を追求しているサステナブル企業のパイオニアです。

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大正紡績の工場では、SANYO STORY の糸になるプロセスを見学しました!
糸はまず、

→原綿を混打綿の機械でほぐしてよくまぜて

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→梳綿機で梳きけずって引きそろえて
→練条機で6-8-本を重ねて引き伸ばすをくりかえして均等なスライバーをつくります

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→粗紡機糸になる直前の工程でスライバーを引き伸ばし撚りをかけた上で粗糸にする

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→精紡機粗糸を引き伸ばして撚りをかけて糸にする

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→まきあげてチーズ(コーン)にします。

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フワフワのコットンがモアモアになって糸に変化していく様子は感動!
こうしてサンヨーストーリーの糸ができました。

できあがったSANYO STORY の糸でストールを織ってくださるのは、播州織りで有名な綿織物の産地、美しい山と川に囲まれた兵庫県西脇の奥にある多可町に住むキャリア60年のシャトル織機の織物職人の土田さん85歳です。 

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シャトル織機とは、杼(ひ、シャトル)の往復運動によって緯糸を通す伝統的な形式の機械で現在ではこの織機で織れる職人は限られた方しかいません。高速の機械と違って、木の管を使っておだやかにゆっくり織っていくのでふっくらした風合いになるシャトル織機は今でも世界中から人気なのに後継者がいない・・・というのは残念です。

そんなシャトル織機で織るストール!
土田さんにもぜひお会いしたいし、ストールが出来上がっていく様子が見たくて、
実際織っている様子を見学させていただきました!

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土田さんの仕事場はまるでアーティストのアトリエのようでした。機械の音、油の匂い、光でキラキラ輝いておちるホコリ・・・。土田さんはお1人で何十年もこの場所で織り続け技術を引き継いでいらしたのかと思うとなにかそこは厳かで尊い場所に思えました。

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心地よく織機の音が響くアトリエでは機械が楽器のようで、まるでコンダクターのような土田さんをみていると、ものをつくるということは機械があれば誰でも同じものがつくれるものではなくて、その人でなければつくれないものがある、ということです。
このストールは、土田さんにしかつくれないストールなのです。

織りあがったストールに藍染してもらう徳島のBUAISOUも一緒に土田さんのところを見学して最後にみんなで記念撮影をしました。

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そしていよいよ藍染です。
藍染は徳島のBUAISOUにお願いしました。

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※写真一番右がカジさん、右から二番目が渡邊さん

もともと東北出身の渡邊さんとカジさんが2012年に設立したBUAISOU。
阿波藍の産地として知られる徳島県上板町を拠点に藍の栽培から染料となる「すくも」を造る藍師であり、藍染液の仕込みと染色もする染師でもある、まさに製品に仕上げるまでを自らの手で一貫して行うスーパーユニットです。 またすくもに木炭汁、ふすま、石炭のみを混ぜて発酵させる伝統技法「地獄建て」で仕込む藍染液は、布や木などの自然素材を深く冴えたジャパン・ブルーに染め上げるのが彼らの特徴です。

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はじめて渡邊さんにお会いした時、瞳を輝かせて藍染めについての熱い思いをずっとずっと語っていらしたキラキラした感じが忘れられません。それは、全然タイプが違う寡黙な職人肌のカジさんと話した時にも感じました。

藍染が大好きで日本の伝統を世界中の人に知ってもらいたくてニューヨークにもアトリエをつくり、剣玉からスニーカーまで独創的になんでも藍染してしまい、それでもまだまだやりたいことが尽きないキラキラ広がる可能性や、新しい土地にポンっと入りすっかりとけこんでいる、これからの日本人の生き方や価値みたいなものを体現しているような彼らに藍染をお願いしよう!と渡邊さんとカジさんにお会いして決めました。
藍染するプロセスもBUAUSOUさんにわがままを言って体験させていただきました。

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ストールはまず、

→藍のカメに2分15秒つけます。
酸化しないようにカメから絶対ださないで、最初はまんべんなく染まるように端から液をくぐらせて空気をぬきます。そして次に真ん中をもって絞って液が行きわたるように中でしぼり空気を絞りきります。 これをいちど乾かして、また同じように2分15秒つけて染めて2度つけします。

→2度つけしたものを乾かして洗います。
→色落ちしないように念には念をいれて乾かして&洗うを10回やってできあがりです!

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BUAISOUさんとの作業は、土田さんのストールが織りあがるのを一緒に見届けるところかスタートしており、一緒に藍染までさせていただいて、ひとつの作品をつくる同士のような強いつながりを感じます。 

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カジさんが、「僕はもともとモノがつくられていく全部の工程に携わりたいと思っていました。だから自分たちで畑を耕して藍を育てて、藍を育てる肥料のもとになる豚までトレースしていました。藍染のカメの横に織機も置いて自分たちで織ることも考えていました。でも土田さんにあってそれは間違っているとわかりました。それぞれの技術のパートがあって、ものをつくりあげるということをそのバトンをつなげていくことだとわかりました。」と話していました。

今回のプロジェクトでお世話になった、「やまず巡る」生活を実践している渡良瀬エコビレッジの町田さんも、環境にも人にも幸せな糸をつくることに人生かけている大正紡績の近藤さんも、60年間シャトル織機の技術を守ってきた西脇の土田さんも、藍染に魅せられて東北より徳島に移住してきてこれからの日本人の生き方とか価値を導いているようなBUAISOUさんも、みなさん同じ方向を向いていて、引き合わされたように必然的に出逢ったように感じます。

サプライチェーンという冷たいうすっぺらい言葉ではなくて、服をつくるということは日本の様々な地域にすむ人たちの思いや技術をつなぎ合わせてバトンをつないでいくことかもしれません。
そして三陽商会の役割はこのバトンを生活者につなげていくことなのだと思います。
SANYO STORY の糸でつむいだストールは4月25日より三陽銀座タワーで発売されます!

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