Category: Tools 道具のこと

Home > Category: Tools > 久保村竹尺のこと。

久保村竹尺のこと。

モノづくりのこだわりは作り手はもちろんだが実はその道具にも表れる。
服をつくるまえにその道具に注目してみる。
それは一見遠回りかもしれないけど服づくりを見つめなおすにはいいかもしれない。

道具も手作りのこだわり

考えてみれば日本人は昔から自分で道具をつくってきた。
獲物をとる石器も畑を耕すくわもお茶を入れる急須もそうだ。便利な情報やモノが手の届くところにあると気付かないけれど、とても大事なことだと思う。
ファッションの世界ではデザイナーが注目されるが日々衣服をつくる仕事に携わる中で感じるのは衣服を作る上でデザインと並び心臓ともいえるのはパターン(デザインを立体にするための型紙)だと思う。そしてパターンの世界には我々の知らない道具がたくさん使われている。

料理の世界で有名シェフの使う包丁や料理研究家の使う鍋に興味が湧くように、日々世の中に衣服を生み出しているパタンナーたちはどんな道具を使っているのかに興味が湧いたのだ。パタンナーに色々尋ねてみると、まさに十人十色で使う道具もさまざま。中でも驚いたことに日々の仕事で使う道具を手作りしている社員がいる、という噂が。よくよく聞いてみると、パタンナーの久保村さんが作った竹尺(竹でできた定規)が使いやすく、10人以上が使っているとか。ますます気になって久保村さんにインタビューしてみた。

tool0001-2.jpg

「先の尖った竹尺」

tool0002-ph01.jpg手作りの定規は、だれもが一度は見たことあるであろう竹でできた20cmほどの定規。その片方が鋭角に尖っている。聞けば市販の竹尺を自分で削っているという。 実はこの竹尺、本来の長さを測るという使い方以外に、抑える、出す、といったパタンナーならではの動きにあわせて使うために削ったそう。どういうことかというと、尖った方でミシンをかける時に生地を抑えたり、衿の角をきれいにしたり、縫い目を裏側から整えたりという一本で何役もこなす代物だ。

「多くのパタンナーはそういった動きを自分の手元にある道具の中から、目打ちなどを使って行うが、竹尺を削れば一本で済む」という話を聞いてすごい発想だなと感心しながらもそこまでしなくてもという気持ちもあったのは正直なところだが、
「アイロン場、ミシン場でも熱で変形しない」
「手に馴染みがいい、吸水性もある」
「生地を傷つけない」
「竹なのでしなりやすい」
と聞いてすごいなと。

tool0002-ph02.jpg

竹が古くから定規に使われてきたのも温暖で湿潤なアジアならではの特長を活かしたものかとますます昔の人はすごいなと思う。
最近はプラスチック製が増えてきたり、安価なものが増えているが、竹をさわっていると確かにどこか懐かしさと安心するような気がする。
EARTH TO WEARで販売する久保村竹尺は 色々と探し回って「竹ものさし」と「手作業」にこだわった滋賀県甲賀市にある岡根製作所さん(1948年)にご協力いただいたもの。
自分で削ってみるという発想にも脱帽だが、同僚のパタンナーにプレゼントしたら喜ばれて評判になり、今では20本ほど配って使ってもらっている、というからすごい。

手芸や洋裁をしている人、もしかしたら服飾関係のプロの方にも?!多くの方に使ってもらえたらうれしいと思って商品化決定しました!

「ごだわりのポイント」

tools_takezyaku.jpg
20cmの理由

10cmだと短すぎるし、30cmだと長すぎる。直感的にも使ってみても一番手持ち感がいい。

けずり方

粗削りした後は布ヤスリや紙ヤスリなど何種類も使い分けて艶々に。
服は摩擦が強いので、滑ることが重要だそう。

角度

とんがりすぎず、膨らみすぎず、実践と感覚による適度なアーチ。
プロが実務で使いやすい角度だから説得力がある。